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朽木誠一郎 の あまのじゃく日記

ごめんなさいと念のため

「結局、社会って変えられるんですか?」に個人的に思うこと

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衣食住が足りたらできるだけ人の役に立つようなことがしたいと思うようになった。そのことに誰よりも自分がびっくりした。

ヒットする記事を作るのはもちろん自分の仕事だけど、それが少しずつできるようになってきたときに、その力は名前を売ることやお金を儲けること以外に使った方がみんなハッピーなんじゃないかという気になって、そういうテーマを仕事に織りこむようにしていた。

3月にYahoo!ニュースさんに福島県内と原発内部を取材する機会をいただいた。9月にはフローレンス代表の駒崎さん・都議のおときた駿さん・スマニュー望月さんのイベントのレポートを現代ビジネスさんで担当させてもらった。どちらも社会問題をテーマにした仕事だった。

gendai.ismedia.jp

でも、正直に言えば、そのときは一つひとつの仕事であって、つながっている感じはしなかった。僕は商業ライターという自覚が強かったので、むしろ何かに特化すると使われにくくなってよくないとも思っていた。そんなときに発生したのが、医療情報のキュレーションメディアの問題だった。

当時、検索エンジンやメディア運営の仕組みがわかっている医療の専門家の方は少ないように思えた。自分がやらなければ、この問題は放置され、いつか本当に被害が出てしてしまうかもしれない。大げさに聞こえるだろうけれど、中国ではインターネット上の虚偽の医療情報により、検索ユーザーが死亡する事例があったばかりだ。

www.nikkei.com

前述したように、特化したくないという意識から、それまでしばらくはあまり医学部出身であることを押し出さず、オールラウンダーとして執筆の仕事をしてきた。これも正直に言えば、医療ライターになるのなら、医師になって執筆の仕事をするのと同じか、それより専門性に乏しくなる、という思い込みがあったのもその理由だ。

ようやくプロのライターになれたかな、というタイミングで、自分にしか発信できない問題が目の前に転がっていた。いろいろ悩んで、それを取り上げることにした。

社会のほんの一部で上がった声は、やがてネット世論の大きな波になり、企業の方針変換を促し、そしてリアル世論にも影響を与えた。その間に僕は何度も先の対談を読み返していた。「社会は変えられる」と断言できるほどのことではないけれど、もしかしたらそういうこともできるのかもしれない、と今は言える。

当時、こんなツイートをしていた。実際にこれに近い流れになったことはうれしい限りだが、びっくりするようなクソリプも飛んできた。そして、これが社会問題に取り組む壁の一つだよなあ、とつくづく思った。晒し上げが目的ではないので抜粋にとどめるが、以下のようなものだ。

む~りぃww
サメ軟骨サプリ食べて
それが消化吸収分解代謝輸送再合成されて
膝の軟骨になるくらい
む~りぃww

んなドリーマーが
編集やってちゃアカンがなww

「社会を変えよう」みたいな意見には、こういう反応がつきものだ。諸先輩方はそれを跳ね除けて事を成したのだと思うと頭が下がるばかりだが、それにしても、どうして人の足を引っ張ろうとするのだろう。正しすぎる意見はムカつく、という心境はわからなくはないが、それでも、人の足を引っ張ろうとする社会であってほしくはない

ただし、絶対的に正しい意見なんて存在しない。僕は医学教育を受けたメディア関係者という立場で、自分が正しいと思う意見を発信した。別の意見もあるだろう。あとは対立する利害を、どうすれば社会がよくなるかという観点から、最大公約数的にならしていくしかない。

だからこそ、何かを変えるときは変え方が重要だ。議論はできるだけ落ち着いた言葉で、感情ではなく事実を積み重ねて、丁寧になされるべきだと思う。恨み辛みはいずれかならず議論の妨げになるし、その意味では収拾がつかなくなりつつある現状に悔いも残る。

今でこそ紙の仕事も多いが、もともと僕はインターネットがなければライターになれなかった人間だ。インターネットの自由さを守りたいと思う一方で、その便利さゆえにインターネットが普及し、アングラからインフラになった今、一定のルールやマナーが求められるのは仕方がないのではないか、とも思う。

しかし、そのルールやマナーの在り方もまた、社会の一部である以上は、やはり変えることができる。先の対談の駒崎さんの言葉をお借りすれば“人が作った制度を、人が変えられないわけがない”のだ。その点については、これからも粘り強く議論を重ねるべきだと思うし、僕も現状に責任のある人間として、そこに参加していきたい。

結果として社会問題に取り組むようになって、自分にしか発信できない問題はあるし、それを見すごしたくないと思うようになった。点と点がつながったというか、ライターとしての取材をする力、執筆する力を、医療という誰もが関わるテーマに活かしたら、僕も人の役に立てるかもしれない、という感覚だ。そして冒頭に戻る。

bylines.news.yahoo.co.jp

www.fujisan.co.jp

www.clasic.jp

hrnabi.com

最近はこんな取材をしている。一度は馴染めずに逃げ出した世界だが、実際にお話を伺うとやっぱりみんなカッコよかった。どんな形で医療に関わるかはまだ決めていないものの、来年度の合格を目標に医師国家試験の勉強をしている。あとは、馴染めなかったという自分のルーツを考える上でも、母校の問題にもいずれ取り組みたい。

www.sankei.com

もちろん、テーマを医療に限るつもりはなく、2020年の東京オリンピックを目標にアスリート取材もしていきたい。ワークスタイルやテクノロジーのテーマも引き続き取り組む。ただし、特化することを怖がって避けることなく、人の役に立ちたいという自分の欲求にも正直に、これからも社会問題を含む仕事をコツコツやっていくつもり。

最後になりますが、いつも記事を読んでくれるみなさま、どうひいき目に見てもバランスのよくない自分をサポートしてくれる担当編集者・媒体/クライアントのみなさま、相談に乗ってくれる仲間・先輩たち、そして自分をプロにしてくれた編集プロダクション・ノオトに、心からありがとうございます。来年もよろしくお願いします。